1998,07,17


渚の英雄伝説 −第43話−

フルメタルジャケット

鋼鉄弾丸娘・・・鉄砲玉ってことさ


 

ヤン・ゲンドウ率いるイゼルローン駐留艦隊は、反乱鎮圧のため首都星ハイネセン目指して出撃した。その途上、ハイネセンを脱出してきたバグダッシュ中佐のシャトルと遭遇する。(この広い宇宙でよく偶然に出会えたものだ)まあ、それはそれとして、バグダッシュ中佐はゲンドウの前に立っている。

「あなたがゲンドウ君ね、髭がカワイイ」

口の前で両手を合わせる可愛さ爆発(本人談)ポーズの少女。

「何だ貴様は」

アゴの前で両手を組む、いつものポーズで見返すゲンドウ。

「私、バクダッシュ・マナは本日午前6時に起きて、ゲンドウ君の為にこの制服を着てまいりました!どう?似合ってる?」

無意味にテンションが高い。しかも、あのゲンドウに向かっていきなりタメグチである。

「ねえねえ、この船って屋上(展望室)があるんでしょ?私、ゲンドウ君と一緒に、星の海を眺めたいなー」

正面に立つマナを静かに見上げるゲンドウ。

「・・・つまみ出せ」

「イヤー、何でー、誰か助けてー、人さらいー!エッチー!」

加持に襟首を持たれてつまみ出されるマナであった。

 

「シンジ、何だアレは」

「そんな事、僕に聞かれてもわかるわけないじゃないか」

「・・・お前が責任をもって処分しろ。いいな」

「処分って、そんな・・・」

「ここで何をしている。話は終わった。さっさと行け」

面倒事はシンジに押しつける、それがゲンドウの処世術となりつつある。

 

司令官室を追い出されたシンジは、とりあえず屋上(展望室)へと向かった。安易にも、そこで星の海をながめているマナを見つける事ができた。

「きれいねー」

「ホント、きれいだ」

マナの横顔に見とれるシンジ、お約束である。

「えへへ、ありがと」

「えっ、いやっ、そういう意味じゃなくって・・・霧島さんて星が好きなんだ」

「うん、小さい頃から大好き。それでね、もっと近くで星を見たくなって、気がついたらパイロットなんてやってた」

「さっきのシャトル、霧島さんが操縦してたんだ」

「うん、危うく道に迷いそうになちゃったけどね」

テヘヘっと舌を見せて笑うマナ。なかなか破壊力抜群の笑顔である。最近まわりに女っ気の無いシンジには、たいそう応えるモノがある。

「あなた、司令と住んでるんだって?よかったら、名前、教えて」

「シンジ・・・ユリアン・シンジ」

「シンジ君ね。見て」(キラーン)

そう言ってマナがポケットから取り出したのは、大きな飾りのついたペンダント。

「この見るからに怪しげなペンダントは?」

すでに腰が逃げている。

「私がシンジ君につけてあげるの」

「いや、ちょっと」

「動かないで!くすぐったいけど、我慢してネ。はい、ついたわ」

「とっ、とれないよー、これ」

「肌身離さず付けててね。でね、この裏の所に電池が入ってるから、1週間に1度は取り替えるの忘れないで」

「・・・何の電池なの」

「それはねー、うふ、ヒ・ミ・ツ」

そう言って可愛く笑うマナ。
本来なら、このあたりで誰かの突っ込みが入るのだが、同盟にはアスカもレイもいない。

『誰も突っ込んでくれないじゃないか。誰か僕を助けてよー!』

構成のミスに今更ながらに気がつく作者であった。

 

けっきょくヒューベリオンの中をあちこち案内させられる事になったシンジ。もっとも、案内する相手がこんなに可愛い女の子なのだから、シンジとしても内心まんざらでもない。そうこうするうちに、居住区にあるゲンドウの部屋の前にたどり着く。そこは同居人たるシンジの部屋でもある。

「ここってシンジ君の部屋なんだ。のぞいてみたいなー」

上目使いで甘えた声を出すマナ。気丈にも、それに耐えるシンジ。

「うん、でも知らない人は入れちゃいけないって、司令に言われてるから」

「こーすれば、入れるんじゃない?」

ムニュ

マナがシンジの背中に抱きつく。(多くの人が知っていると思うが、マナは着痩せするタイプである)
この瞬間、ゲンドウの言いつけなどきれいに頭から消えて無くなるシンジ。
すでに部屋の扉を開けている。

「シンジ君、やっさし〜い」

耳元で囁かれる。もはや、シンジはたんなるデクとなり果てていた。
嬉しそうに部屋に飛び込んだマナは、そこら中を物色している。

「シンジ君てブリーフ派なんだ」

「ああ、タンスの中なんて見ないでよ」

「じゃあ、ここは?」

「ああ!ダメだよ。ベッドの下なんて、そんなとこのぞかないでよ」

「あ!怪しい物体を発見。これよりサルベージを開始します」

「やめてよ!お願いだから、もうやめてよ」

 

ピピピ ピピピ ピピピ

 

その時、マナのポケットの中から電子音が響いた。

『ハイ、マナです・・・・・あ、メガネ君・・・うん、今、着いたところ』

「携帯電話・・・圏外じゃないのかな?」

(細かい事は気にするな、シンジ君)

『でね、目標と接触したんだけど、けっこうガードが固くってー・・・・え?目的地?ちょっと待って』

「ねぇシンジ君、私達って何処に向かってるの?」

「・・・ハイネセンだけど」

『ハイネセンだって・・・・理由?』

「どーしてハイネセンに行くの?」

「・・・クーデターを鎮圧するためだと思うよ」

『なんかメガネ君たちをやっつけに行くみたいよ』

「・・・そういう事を僕の前で話されても困るんだけど・・・」

『大丈夫・・・・予定航路もバッチリ調べとく・・・・うん。じゃあ』

電話を切ったマナ。シンジがジト目で見ているのに気がつく。

「何?」

「今の電話って、誰からなの?」

「あー、シンジ君って、マナに誰から電話がかかってくるか気になるんだー。妬いてるの?」

「そ、そんなんじゃないよ」

「なーんだ。残念」

「え?」

「エヘヘ、私、用ができちゃったから、もう行くネ。バイバイ」

天然かねらっているのか、少年の心を巧みにもてあそぶマナであった。

 


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