1997,8,18


渚の英雄伝説 −第4話−

勅 命



元帥の地位を得て帝国艦隊の半数を指揮下に納めたカヲルは、新たな登場人物の キャスティングに頭を悩ませていた。

神速の用兵と誠実な人柄で知られるウォルフガング・洞木ヒカリ。
趣味は手料理。

攻防両面における作戦の緻密さ柔軟さで有名なオスカー・フォン・相田ケンスケ。
なぜか左右のメガネの色が違う。

攻めてるときは天下無敵、フリッツ・ヨーゼフ・鈴原トウジ。
黒のジャージを身にまとう。

そして、大佐から一気に少将に昇進したジークフリート碇シンジ。


カヲルの元帥府に、帝国の精鋭が並ぶ

「なんやケンスケ、そのけったいなメガネは、気色悪い」

「わかってないな、これは迷彩なんだよ」

「迷彩?金色と銀色でなんの迷彩になるんや」

「僕の独自の理論に基づいた宇宙戦用の迷彩さ。それより、そっちこそなんだよ そのジャージは。トウジには軍服に対する愛情ってものがないのか」

「鈴原、規則なんだからちゃんと軍服着なさいよ」

「アホぬかせ、このジャージこそワシのポリシーや」


カヲルは目の前で展開される光景を見ながら感想をもらす。

「若くて有能な前線指揮官はそろったから、あとは参謀が欲しいね、シンジ君」

「よかった、使徒とかじゃなくて本当によかった」

シンジはカヲルが本気で疾風サキエルを連れてくるものと思っていたらしい。
冷静に考えれば、ただ若いだけなのではとも思えるメンバーに何の疑問も抱かなかった。



そんなささやかな喜びに浸るシンジに勅命が下る。
場所は先日華やかな式典が開かれたNERV第3ケージ。

「久しぶりだな」
玉座の前に立ち上がりシンジを見下ろす皇帝ゲンドウ。

「御意」
皇帝の前に出て舞い上がるシンジ。

「・・・ふっ。出撃」

「出撃?」

何の事かわからず思わず問い返してしまうシンジ
そんなシンジの態度を咎めもせずに説明するゲンドウ。

「先日カストロプ公赤木リツコが反乱を起こした。鎮圧はお前がやるのだ」

「僕が行って使徒を鎮圧してこいっていうの」

「使徒ではない、暴徒だ」

「どうして僕なの」

「他の人間には無理だからな」

「無理だよそんなの、できるわけないよ」

「やるなら早くしろ、でなければ帰れ」

神聖不可侵の皇帝陛下にけっこう言いたいことを言うシンジ。
無言でうつむく姿を自分の命令に対する拒絶と理解するゲンドウ。

「シンジ、お前が行かないというのであれば仕方がない」
「冬月、レイを起こしてくれ」

「ちょっと、綾波をどうする気なの」

「お前の代わりだ。レイを出撃させる」

「そんなの無茶だよ。カヲル君をいかせればいいじゃないか」

「決めるのは私だ」(ニヤリ)

「わかったよ、僕が行くよ」


すったもんだのあげく、渋々出撃するシンジ。
カヲルの副官としていくつもの戦闘に参加してきたシンジだが、自分が兵をひきいて 戦うことは初めてである。
シンジの心は憂鬱だった。



肩を落として退室するシンジを見下ろすゲンドウ。
その玉座の陰からレイが姿を現す。

「これで良かったのかレイ。すべてはお前の願い通りにしたつもりだが」

「はい、問題ありません」


これでいいの、これで
これでカヲルと碇君を引き離せる

碇君がいつまでもカヲルの副官でいるのがいけないの

この任務を遂行して碇君が今よりもっと偉くなれば
いつまでもカヲルの副官というわけにはいかないはず

でも、もし失敗したら?

その時は責任をとって軍を辞任ね
私の専属護衛侍従の地位を用意してあげるわ
なんだか、こっちの方がうれしいかも

ごめんなさい、碇君


続きを読む
メニューに戻る