転校生 C Part

華王



「山岸さん、ここが職員室です。あとは大丈夫ですよね。」

「はい、大丈夫です。わざわざありがとうございました。」

私達は碇くんと別れたあと、職員室に向かいそしてドアの前に立っていた。

そして私はヒカリさんにここまで連れたきてくれたお礼を言った。

でも一つ気になる事があったのでヒカリさんに質問する事にした。

「あ、ヒカリさん」

「はい」

「担任の先生の名前は加賀先生でいいんですよね。」

「ええ、そうよ。歳を取った方で眼鏡を掛けた白髪頭の人がそうですよ。歳を取った先生は

加賀先生しかいらっしゃらないからすぐに解かると思いますよ。」

「わかりました、眼鏡を掛けた白髪頭の方が加賀先生ですね。」

「そうです、じゃあ山岸さんまた後で。」

「ええ、ヒカリさんまた教室で。」

ヒカリさんと私はそう言葉を交わし終わるとお互いに手を振って別れた。

でもよかったヒカリさんが親切そうな人で、たとえ短い間だけれどもヒカリさんみないな人

と一緒になれて。でもなんか左京さんに少し似てるな・・・

と私は心の中で思っていた。

そして私は、職員室のドアの前に立つと深呼吸をしてドキドキする気持ちを落ち着けてノッ

クをして「失礼します」と言いながらドアを開け、職員室へと入っていった。



「え〜、あなたが山岸 マユミさんですね。」

「はい」

私と加賀先生は職員室の隣りにある進路相談室で向かいあって座っていた。

「あの、すみませんが親御さんは今日は一緒にいらっしゃらないのですか。」

「はい、父は今日は仕事が忙しいらしくてこれないので・・・」

私の言葉の語尾は少し小さかった。

「そうですか、まあいいでしょう。私はこれから職員会議があるので、しばらくの間ここで

待ってていただけますか?」

「はい」

私がそう返事をすると加賀先生はゆっくりと立ち上がって相談室から出ていった。

フゥ、自然とため息が洩れる。

覚悟していたけどお父さんの事を聞かれるとつい緊張してしまう、私は汗を拭をうと額

に手をやった、手のひらが濡れてる。

知らないうちにかなり緊張してるみたいだった・・・・

でもこうして静かに一人で居るのってなんかイヤだな、あの事を思い出して・・・



『マユミ・・・ママの事好き?』

『うんマユミはママの事だ〜いスキだよ。』

『そうよかった

ねえマユミ、ママと死んでちょうだい・・・』

『え?なにママ。』

『ね、マユミ、ママと死んで・・・』

『ママ・・・止めて・・・』

『マユミ・・・・ママと一緒に死んで・・・・』

『ママ・・ママ・・・く、くるしいよ・・・・』

『マユミ・・・・ママと一緒に死んで・・・・』

『マ・・・・・ママ・・・・くるしいよ・・・たすけて・・・ママ・・・・・やめて』

『マユミ・・・私と一緒に楽になりましょう・・・・』

『マ・・・マ・・・・・・・』


気が付くと、私はうずくまって頭を抱えて泣いていた。

嫌だな・・・またあの事を思いだして・・・・

早くあの事は忘れたいのに・・・・

私はかばんを開けてハンカチを取り出し涙を拭いた。

そしてかばんから本を取り出して読み始めた、辛い現実の世界から誰も私を傷つけえる者

のいない本の世界へと・・・



「山岸さん、山岸さん。」

「はい!」

気が付くと加賀先生が私の横に立って私を呼んでいた。

「すみません、つい本に夢中になってしまって。」

私は本当に失礼な事をしたと思い心のそこから謝った。

でも加賀先生はそんな事はまったく気にしないで、笑いながらこう言ってくれた。

「いやいやいいんですよ、本を読む事はいい事ですから。それに学生の仕事は勉学ですから

本を読む事は大変いい事です。

そうだここの図書館はいい本がそろっていますから貴方にはいいかもしれませんね。」

「はい。」

よかった優しそうな先生で、と私は心のなかで思った。

読んでいた本をかばんに入れ、かばんと荷物を手に持つと椅子から立ちあがった。

「では行きましょうか。」

そう加賀先生が言うと。

「はい」

と私は返事をし、私達は教室へと歩き始めた。



「そうだ、山岸さん。聞き忘れていた事がありました。」

少し歩くと加賀先生が私の方を振り返り思い出したように言った。

「なんですか加賀先生?」

「転校初日で申し訳なんですが、今日は一時間目から体育の時間なんですが。女子は水泳な

んですよ、それで水泳一式は持ってきてくれましたか?」

「ええ、昨日のお電話でそう言われたので前の学校で使っていた水着とタオルは持っ

てきましたが。」

「よかったですね、転校一時間目から見学では変ですからね。ハハハハハ」

「はあ」

そんな事を話しているといつのまにか2年A組の前に着いていた。

教室の中からは生徒達の楽しそうな様子が廊下にいても感じ取れる。

「では山岸さん、私が先に入りましてHRで連絡事項を言った後呼びますのでしばらくの間

ですが廊下で待ってていただけますか。」

「はい、解かりました。」

「では」

そう言うと加賀先生は扉を開け教室へと入って行った。



「では転校生を紹介します、山岸 マユミさんどうぞ。」

しばらくしてHRが終わったらしく、中から加賀先生の私を呼ぶ声が聞こえた。

「はい。」

私はやや大きめに返事をして、ドアノブに手をかけ短く深呼吸をしてからドアを開け教室

へと入っていった。

教室に一歩足を入れると、クラス中からの視線が私に集まっているのが解かる。

『恥ずかしい・・・』

こころでそう思いながらも、教室の中を見回してみた。

でもアレ?という言葉が心に浮かぶくらいその教室は変だった・・・いやに生徒の数が少な

くそれに空席の席が目立つのだ。

そして若干女子の方が生徒数が多いみたいだった。

私は少しその事に戸惑ったが、前の方に座っているヒカリさんと目があった。

ヒカリさんは目が合うと小さく手を振ってくれた、でもなんか少し照れてるみたいだ。

私はそれに小さい会釈で答えて、視線をヒカリさんから斜め後ろへ移した。

そこにはさっき玄関で会った碇さんが座っていた、碇さんも私を見ると小さく会釈をして

くれた。それに対して私も会釈で答えた。

そして私は教卓の横に立ち、手に持っていたかばんと荷物を足元に置いた。

加賀先生が私の方を向いて。

「では、山岸さん自己紹介をお願いできますか。」

「はい」

そう私は返事をすると、後ろを向き白いチョークを手に取ると黒板にできるだけ綺麗な字で

『山岸 麻由美』と書いた。

名前を書き終わると振り返って、深々とお辞儀をしてニッコリと微笑んで。

「はじめまして、第二新東京市から転校してきました山岸 マユミといいます、短い間だと

思いますけど、よろしくお願いします。」

と短い自己紹介をした。

「はい、山岸さん自己紹介ありがとうございました。皆さんも山岸さんに聞きたい事はある

と思いますが、それはHRが終わった後にしてください。さて席をどうしましょうか?そう

ですね、洞木さんの隣が空いていますね。山岸さん洞木さんは解かりますね。」

「はい」

「では洞木さんの隣りに座ってください。洞木さんお世話をお願いします。」

「はい」

私はそ加賀先生に言われると、もう一回クラスの皆に向かってお辞儀をすると足元に置いた

荷物を取るとヒカリさんの隣りの席まで行った。

ヒカリさんは私が隣りの席まで行くと。

「よかったね、隣同士になれて。」

とヒカリさんが話しかけてきた。

「そうですね、あとさっきはありがとうございました。」

「いいわよ、それはそうとこれからよろしく。」

「こちらこそ。」

私はそう言うと、手荷物を机の横に置き座席に腰をおろした。

席に座ると後ろからの私を見る視線に気が付いた。

後ろを振り返ると、私を見ている碇さんと目があった。

目が合うと碇さんは少し驚いていた様子だった。

碇さん私の事が気になるのかな・・・・でもそんな事ないよね、私は特に綺麗でもかわいく

もないもんね・・・ただ転校生が珍しいからだよね・・・・

でも・・・・

私は碇さんを見ながらそんな事を考えていた。



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