転校生 B Part

華王




「第3使徒 サキエル

第4使徒 シャムシエル

第5使徒 ラミエル

第6使徒 ガギエル

第7使徒 イスラフェル

第8使徒 サンダルフォン

第9使徒 マトリエル

第10使徒 サハクイエル

第11使徒 イロウル

そしてイレギュラー使徒ラファエル・・・・・・」

ここはNERV本部執務室、限られた人物しか入ることのできない部屋。

その広くて薄暗い部屋に二つの人影があった。

一つはNERVの司令 碇 ゲンドウ。

そしてもう一人は加持 リョウジ。

ここで二人はさっきから話をしていた。

「予定通りですか、ここまでは。」

加持は手に持っていたファイルを閉じゲンドウの方に振り返りながら言う。

「ごく一部の例外を除けばな。」

ゲンドウはそんな加持の動作を見ながら微動だにしないでいる。

加持はそんなゲンドウの横を通りすぎ窓から外を見ながら話を続けた。

「人類補完計画。アダム。そしてエヴァ。例外は命取りになりはしませんか?」

「何事にも、イレギュラーはある。すべて修正可能な範囲の出来事だよ。」

「なら、いいんですがね。」

「もちろん、君の行動も含めてだが。」

「しかし」

「有能な人材は無下にはせんよ。」

たいした自信家だな・・・・

加持はそんな事を思った、そしてその自信がどれほどの物かと思い少しゲンドウに不愉快な

事を言う。

「どんな強固なダムも、壊れるのはほんの小さな亀裂からといいます。

司令が、もしもその亀裂を見つけたとしたら。」

ゲンドウはそれには答えず、口元で組んだ両手の下でニヤリと笑った。

そのくらいのイヤミではなんともないか・・・

部屋の中を支配する沈黙、フーと加持は心のなかでため息を吐きそろそろ部屋から出ようと思

ったその時、突然電話の音が鳴り響いた。

加持は少し驚いたが、ゲンドウは慌てることなく静かに机の引き出しを開けまだ鳴り響いて

いる電話の受話器を取った。

そしていつもと変らぬ口調で話しかける。

「私だ。」

「・・・・・・・・・・」

「ああ、解かった。案内してくれ。」

そう言い終わると受話器を置き、引き出しを閉めた。

「では碇司令、また。」

「ああ。」

加持はこの部屋に来客が来る事を察して、ゲンドウにそう言うと司令室から足早に出て行っ

た。

「ついに来たのか・・・・」

司令室から出た加持の口からそんなセリフが出てきたのだった。



暫くすると司令室のドアを叩く音が響いた。

「入れ」

その声に導かれるように入ってきた男がいた。

その入ってきた男は、たとえるなら『平凡』まさにその二文字が似合う姿だった。

頭髪は綺麗に散髪され、よくアイロンのかけられたスーツを着ている。

「いやあ、お久しぶりですね。六分儀先輩。」

しかし彼の口から出た言葉は平凡とはかけ離れたものだった。

「ああ、ひさしぶりだな山岸。たしか9年ぶりだな。」

「ええ、もうそんなに経ちますね。」

「すまなかったな、あの時は。」

「いえいえ、あの事はそれほど気にしてませんよたまたま偶然起きた不幸な事故だったんですから

ね。」

「そうか。」

「でも、マユミは渡しませんよ。大事な一人娘ですからね。」

そう言った口調は変らないが表情が真面目なものになっていた。

「そうか・・・・・そうだ山岸、NERVに入らないか。ちょうど作戦部部長の席が空席な

んだ、なるきはないか?おまえが部長になればNERVもより強固なものになるが。」

「ははは、遠慮しときますよ。NERVには美人で優秀な作戦課長さんがいるみたいですか

らね。ではそろそろ失礼して先輩の作った自慢のEVAでも見させてもらいますか。」

「そうか残念だな、では赤木博士を呼ぼう。」

「いえいいですよ、自分で行きますからでは先輩またあとで・・・」

そう言うとゲンドウに背を向けドアに向かって歩き始めた。

しばらく歩いて、さも思い出したように振り向くと。

「ああ、先輩。冬月先生によろしくと、山岸が言ってたと伝えておいてください。」

そう言い終わるをと、静かにドアを開け外へと出ていった。

しばらくしてゲンドウが呟いた。

「・・・・クロマニヨン・・・・嫌なものだ。」

その顔にはさっきとちがって苦々しい表情が張り付いていた。



「パターン・オレンジ、未確認。不規則に点滅を繰り返しています」

司令部にマヤの緊張した声が響いた、そしてその顔には恐怖が浮かんでいる。

「もっと正確な座標をとれる?」

ミサトがマコトの方に振り返って指令を出す。

「これ以上は無理ですね。なにしろ、反応が小さすぎて。」

マコトもモニターから後ろを向いて答える。

「地下か・・・、使徒ならマズイはね。」

ミサトは無意識にそうつぶやいていた。

「そのようです。進路は約300メートル。」

「パターン、青に変わりました!」

そう報告するマヤの声はさらに緊張していた。

「使徒?」

ミサトの顔が険しくなる。

「目標ロスト。すべてのセンサーから反応が消えました!」

「観測ヘリからの報告も同じ。目標は、完全に消失!」

シゲルもモニターから振り返ってそう報告する。

「どういうこと?先週からこれで3回目よ。」

さらに険しい顔つきになるミサト。

「試しているのかも。私たちの能力を。」

リツコが少し笑いながらそう言う。

「使徒に、そんな戦術的判断ができるっていうの?」

「生存本能と闘争本能のせめぎ合いが、人間に戦うための知恵、すなわち戦術というもの与

えた。使徒がそれを手に入れてもおかしくないわ。使徒が生き延びたいならね。」

「リツコ、零号機は?」

「機体、パイロットともに、問題なし。いつでも出撃できるわ。」

リツコは飲みかけのコーヒーを置きながらそう報告する。

「見えない、敵か。」

ミサトは険しい表情をくずし、そのコーヒーを飲みながらそう呟いた。

「そうだ、ミサト私はそろそろ失礼するから。」

そんな様子を見ていたリツコは、そう言うと書類をそろえて出ていこうとする。

「あれ、リツコどうしたの?」

「ほらあれよ。国連の技術者が来るでしょう、そのお守りよ。」

「ああ、アレね。がんばって〜。」

ミサトはそう言うとのんきに手を振っている。

リツコはさっきまでの緊張感はどうしたのかしらと思いつつ司令部から出て行った。



コッコッコッコ・・・ピタ

廊下を歩いていた山岸は突然その歩みを止めた。

「誰だ?」

山岸は曲がり角の先にいる気配を感じ取って声をだした、でもその口調には親が子供を叱り

つける口調似ている。

「お久しぶりです、山岸隊長。」

そう言って出てきたのは加持 リョウジだった。

「いやあ、元気そうだね加持くん。」

その表情にはさっきと違い微笑みが浮かんでいる。

「ええ、なんとか。」

一方加持の方はかなり緊張しているのが一目で解かる。

そんな加持の様子を見て山岸はさらに頬を緩める。

「どうした加持くん緊張なんて君らしくないね、でも元気そうでよかったよ。

そうだ、赤木博士の所まで案内してくれないか。」

「は。」

「ハハハハまだ緊張してるようだね、そうだ明日あたり暇をとれないかな?」

「隊長の望みでしたら今すぐにでも。」

「いやいや、加持くん相手してもらうのは私じゃないよ。」

「え?」

「いや、マユミもこっちに来てるからねその相手をして欲しいんだよ。私はいろいろ忙しい

からね。」

「え、お嬢さんもいらっしゃてるんですか?」

「ああ、そうなんだ。マユミも知らない街で一人だと寂しいだろうからね、できれば相手を

してやってくれないか?」

「ええ、べつにかまいませんが。」

「そうか、安心したよ。」

「たしかお嬢さんは今年で14歳ですよね。」

「ああ、そうだ。」

「もう最後にお会いしたのが3年も前になるんですね。」

「そうか、そんなになったか。」

「はい、私がドイツに行く前に会ったのが最後ですから。もしかしたら、お嬢さんは私の事

を忘れられてるかもしれませんね。」

「大丈夫だ、マユミは忘れはしてないさ。」

「はあ、ではさっそく明日にでも会いに行くとします。」

「すまないがそうしてくれないか。では私はそろそろ行くから。」

「隊長お送りします。」

「いいよ、別に。それより例の事頼んだぞ。」

「は。」

山岸はそう言うとゆっくりと加持のもとから離れていった。

「例のコトか・・・・・気楽に言ってくれるもんだ。」

残された加持の口からため息まじりの呟きが洩れた。




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