転校生 A Part

華王



−NERV・短期滞在者用宿舎−

ジィリィリィリィー

六時ちょうどに目覚しが鳴っている。

私はすこしだるそうに布団から手を伸ばして目覚まし時計のスイッチを切った。

いつもは、すっきりと起きれるのになんだか今日は少しだるい・・・

私は少し寝不足気味だった、昨日は少し興奮してなかなか寝つけになかった

からだ。

日本で暮らす最後の・・・か。

心の中にそんな考えが浮かんでてくる。

私はそんな気持ちを落ち着かそうと額に片腕を乗せ、天井を見ながら深々と深呼吸

をする。

「知らない天井か・・・・」

でもなぜだか自然とそんなセリフがでてきたのだった・・・・

私は静かにベットから身を起こす、そして足取りも重く洗面所にいき冷水でそっと

顔を洗う。

顔を洗い終えると静かに深呼吸をする。

鏡に映る自分はまだかなり眠たそうな顔をしている・・・・

そんな自分が少し嫌になった。

私は朝食を作るために洗面所から出て行った。



お父さんと、私は一言も喋らずにただ黙々と朝食を食べている。

お父さんは新聞を片手に、そしてその父の様子をチラチラ盗み見している私・・・・それは

いつもの朝食時の風景。

でも今日は私にはお父さんに言う事があった。

「ねえお父さん、今日は一緒に学校に行ってくれるの?」

勇気を振り絞って、そして少し明るく言う。

私はOKしてくれるという淡い期待を抱きながら。

「マユミ、私にそんな暇があるとでも思っているのか?」

でもいつもの反応、お父さんはいつも決して私にはかまってくれない。

でも今日だけは一緒に来て欲しい。

だらか勇気を出して言う。

「でも・・・」

「しょうがないだろ。碇司令と赤城博士に挨拶しなくてはならないんだから。

じゃ、私はもう行くぞ。しっかり戸締まりして行くんだぞ。」

その答えはいつもと同じだった。

そして、新聞をテーブルの上に置くとさっさとダイニングキッチンから出ていこうとする。

でも私はさらに勇気をだして言った。

「う、うん。でも・・・・」

でも、でも今日は今日だけは。

「でも、なんだ?」

そんな、お父さんのセリフと冷たい視線に私の勇気など消えてしまう。

「な、なんでもない。」

パパは少し怪訝そうな顔をしていたが、ネクタイを閉めるとすぐにネルフへと

出かけていった。

「お父さんのバカ・・・」

結局いつもと同じか・・・・

私の願いはいつもかなえなれない、結局いつも私は一人ぼっち。

だから、ミンナキライ。




第三新東京市。

日本の次期首都予定地。

そして、使徒と呼ばれる正体不明なモノ達が来る街。

私はここであと1週間を過ごす。

なんか変、初めて来た街なのに初めてじゃない気がする。

ナゼ?

初めて歩く第三新東京中学校への道・・・

初めての街、初めての学校、初めての教室、初めての・・・・

そうここには私の知っているモノがなにも無い。

すべて初めての街。でもすれ違うだけのトコロ、でも日本で最後に暮らす街。

ねえ、私はここでどうしたらいいの?

そう、誰も知り合いの居ない街で。

いや、この日本中どこを探しても私に親しい知り合いなんていない・・・

でも、何故か期待している。

ナゼ?

アタラシイ街ダカラ?

ソレトモ・・・

ワカラナイ?

私がそのような事を考えながら歩いていると、何時の間にか学校に着いていた。

外から学校を眺める。

最初の印象は意外と大きい思った、校舎も大きいし校庭も広い、すべてがこじんまりとし

ている第二新東京市とは大違いだ。

前の学校はこんなに広くなかったのに、生徒数も多いのかな?

でも、朝早いからシ〜ンとしてまるだ廃虚みたい。

あと一時間もすると生徒達であふれるようになるのに。

何時までも外に居るわけにもいかないので、職員室に行こうと思い第一校舎の中

に入っていった。

でも、どこに職員室があるのか解からなくて廊下で少しきょろきょろしていいると、後ろの

方から

「どうかしましたか?」

と突然声をかけられた。

私がビックリして振り向くとそこには日誌を持った真面目そうな女の子が立っていた。

その子は短めの髪を両端で縛っていて、顔にソバカスがあるのが印象的だった。

「あ、あの・・・あなたは。」

私は少しためらいなが言った。

「私は二年A組の洞木 ヒカリですけど、貴方は山岸 マユミさんですね?」

「そうですけど・・・なぜ私の事を?」

彼女がなぜ私の事を知っているか疑問に思ったのでさらに聞いてみる事にした。

「私はA組の委員長をしているんですど、さっき日誌を取りに職員室に行ったら先生に今日

転校生が来るからと言われたので。」

「そうなんですか。」

「はい、あ、そうだ職員室の場所解かりますか?」

「それが・・・解からなくて探してたんです。」

「じゃあ、案内しますんで付いて来てください。」

「でも、いいんですか?」

「迷惑ですか?」

「いえ。そうじゃないんですけど・・・・」

「ならいいじゃないですか、それに私達は今日から同じクラスメートなんですよ。」

「では、洞木さんお願いします。」

「じゃあ行きましょう。」

洞木さんは回れ右をして来た道をまた歩き始めた。

しばらく歩くと思い出したように洞木さんが振り返って言った。

「ねえ、山岸さん。」

「はい。」

「私の事なんですけど、洞木さんじゃなくて。ヒカリでいいですよ。」

洞木は少し照れながら言った。

「うんわかった、ヒカリさん」

ヒカリさん少し顔を赤くして俯きながら少し早歩きで歩き始めた。

『てれてるな。』

心の中でそう私は思った。

こうして私はヒカリさんに付いて行って職員室に行く事になった。



しばらく2人で歩いていると下駄箱のある玄関に着いた。

どうやら私は職員室を探していて、校舎の反対側に行ってしまっていたみたいだった。

そして、その下駄箱には一人の少年がいた。

「おはよう、洞木さん。」

その少年はヒカリさんを見つけるとそう挨拶した。

「おはよう、碇君。」

そしてヒカリさんもそう返事を返した、その様子からするとどうやら同じクラスメートみ

たいだ。

でも普通のクラスメートよりは親しくしているみたいに見えた。

「あれ、洞木さんその子は?転校生?」

その少年は私を見て怪訝そうにヒカリさんにそうたずねた。

ヒカリさんは私の方を振り返って。

「あ、碇くん。この子は転校生の山岸 マユミさん」

と説明し、今度は私の方を振り返って。

「で、山岸さん。この子が碇 シンジくんよ。」

「「は、はじめまして」」

ゴッ・・・

シンジさんと私は返事がシンクロして、しかもお辞儀した頭同士が当たってしまった・・・

「「いたたたたたた」」

「「す、すみません(ご、ごめん)」」

なぜか二人のシンクロはまだ続いていた。

そんな二人を見ていたヒカリさんが、笑いをおさえながら止めに入った。

「二人ともなにやってるの、二人とも。それに山岸さん早く職員室に行かないと。」

「そうですね。」

私達はなんとかヒカリさんのおかげで体制を立ち直らせることができた。

「では碇さん、またあとで。」

そう言うと、私はシンジさんにお辞儀をした。

「うん、山岸さん教室でまた。」

シンジさんはニッコリと微笑むと一人で教室に向かって歩いていった。



・・・・これが私とシンジさんとの初めての出会いだった。

もちろんこの時の私達は、この出会いがこれから起きる数奇な出来事の始まりだとは

知らなかった・・・・・・・



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