ガーデニング
華王




その日、

特務機関NERVの副司令冬月コウゾウは

職員の噂話を耳にした。

「ねえねえ、聞いた?」

「え?なに?」

「副司令がガーデニングを始めたんですって。」

「え、ホント!」

「うん、そうなんだって。

この前広報の子が見たんだって。」

「え〜〜〜そうなんだ。」

「そうなのよ。」

「なんか残念だな・・・」

「そうね。」

・ ・・・・・・・・なんだこれは?

私は廊下を歩いていると、通路の曲がり角の先に職員がいてその話声が聞こえてきた。

どうやら話題が私の事みたいなので、思わず聞き耳を立ててしまった。

しかし、私がガーデニングとはなんの事だろう?

まあ、趣味で盆栽もしてはいるがこれはガーデニングとは言わないだろう?

ならガーデニングといったいなんだ?

今、住んでいる所には庭は付いてないからそんな事もできんし。

う〜ん、解らない。

私はその事が気になったが、先にする仕事もありとりあえず考えるは後でする事にした。

しかし、ガーデニングの事は私の事をほっといてくれないようだった。





私は、碇に会う前に作戦室に顔を出すことをにした。

最近は使徒の来襲もなく、NERV全体にだらけた雰囲気が漂ってる。

この前は作戦課の日向なんぞ、自分の席で堂々とマンガを読んでいた。

まったく、私の教授時代の生徒も隠れて読んでいたものだ。

その時は思わずマンガを取り上げて、説教をしてしまったが。

もしかしたら、今のそんな事があるかもしれないと思い作戦室に入った。

そして、やはりその通りだった。

司令室に居る三人が、カップを片手にイスをそろえて話し込んでいる。

やはり、注意すべきだな。

私はそう思うと一歩足を踏み込んだとたん、また話し声が聞こえてきた。

「ああ、そうそう、副司令がガーデニングを始めたんだって。」

「それですか、私も知ってますよ。昨日総務の子と一緒に帰ったんですけど、その事かな

り話題になってるそうですね。」

「え?なにそれ?」

「あれ、マコト知らないの?」

「あれ、日向さん知らないんですか?」

「ああ、初耳だけど。」

「そうなんだ、なら教えるよ。実はね・・・・・・・・・・・・」

と。そこで青葉は、ドアの所に居る私に気が付いたみたいで急に声を狭めてしまった。

他の2人も、私に気づいたのか席を元に戻して仕事を初めてしまった。

私は暫く、作戦室にいたのだが気まずい雰囲気に気後れしてそうそうに立ち去った。





「いったい何なのだ?ガーデニングは!」

作戦室を後にした私は、かなり苛ついていた。

その後エレベーターに行くと、先に待っていた女性職員がガーデニングのコトで盛り上が

っていた。

もちろん私に気が付くと急に話題を違うことに変更したが。

しかし、それにしても不愉快だ!!

私の知らない話題で、しかも私のコトがNREV中で話題になっている。

まったく、なんのコトなのか・・・・・

司令室の前に着いた私は、怒りを押さえ込むと指令室に入っていった。





「碇、最後にコレが今日の書類だ。後で赤木くんが詳しい報告に来るそうだ。」

「ああ、解った。」

私は碇と連絡事項を伝え合うと、この部屋にある自分のイスに座り、置いてある将棋盤

を取り出すと詰め将棋をして碇が書類に目を通す間暇をつぶす事にした。

そして、暫くすると碇がおもむろに口を開いた。

「冬月。ガーデニングを始めたそうだな。」

「なあ碇、さっきからその事をよく耳にしたのだがガーデニングと一体なんだ?私はそん

な事してないぞ。」

その言葉を聞いた私は、将棋盤から目を離して碇の方を見ながらそう答えた。

その私の言葉を聞いた碇は人の悪い笑みを浮かべると言葉を続けた。

「冬月、嘘を吐いてもむだだ。」

「だから私は嘘など吐いていない!ガーデニングなんかしてないぞ!」

私は思わず立ち上がって怒鳴りつけてしまった。

しかし、碇はそんな私にかまわず話しを続けた。

「何を言っているのだ冬月、おまえが頭にガーデニングをしてる事はすでに知っている

ぞ。」

「な・・・・」

私は絶句した。

まさか髪の毛の事がバレているとは・・・・・

使徒が来襲してから、度重なる緊張で自慢の髪の毛が少し薄くなっていたのだ。

最近はその事がバレないように、密かに植毛してたのに・・・・

すでに、NREV中でバレていたのか。

しかし、私は心の片隅でコレでやっとガーデニングの意味が解った事に安堵していたのだ

った。





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