続栞
華王


「よいしょと」

私は次の授業に使う教材を、職員室から持ってくると教卓の上に置いた。

重くて一人で持ってくるのは大変だったけど、なんとか一人で持って来る事ができた。

何時も図書館で重い本を整理しているから、一人でも平気だと思ったけど。

量が多いから、やっぱり少し無理だった。

一人では少し大変だから、次からは誰か一緒に行ってもらった方がいいのかもしれないな。

できればシンジさんに手伝って貰えれば嬉しいけど・・・

今度はお願いしてみよう。

私はそんな事を考えながら席へ戻ると、私に気が付いた隣の席のヒカリさんが声をかけた。

「山岸さん」

「はい。」

「さっき碇君が山岸さんに用があったみたいで来ていたけど、急用じゃないみたいだった

けど後で碇君の所に行った方がいいみたいよ。」

「そうですね、あとで碇さんの所に行ってきますね。どうもありがとうございました、洞

木さん。」

「いえいえ、どういたしまして。」

ヒカリさんは返事をしながら、端末を使ってなにかをし始めた。

たぶん、次の時間の予習か何かをしているのだろう。

私はヒカリのさんの言付けを聞いて、シンジさんの席の方を見て姿を探したけどそこには

誰も居なかった。

シンジさんが私に何の用があったのか気になるけど、本人が居ないと聞き様がないから私

は次の休み時間に聞くことにした。

私はイスに座ると、机の上にある本を手に取ると残りの休み時間を潰すため読み始めた。

しばらく本を読み進めて行くと、誰かに見られている感じがして本を閉じた。

すると隣のヒカリさんが私の本をジッと見ているのが見えた。

「なにか御用ですか?」

私は少しビックしながら、話し掛けた。

ヒカリさんは私の本をジッと見ていたのをバレたのが恥ずかしいのか、少し咳払いをして

理由を話し始めた。

「あのさっき碇君が来た時なんだけど、山岸さんが留守だって私が話したらガッカリした

様子で、しばらくそのイスの脇に立ってたんだけど。

暇だったのか机の上の本をパラパラとめくりながら読んでたみたいなんだけど。

急に本を閉じて、ニヤニヤしながら自分の席に戻ったから・・・

本になにか秘密があるのかな〜て、その時から不思議に思ってたんだけど。

ねえ山岸さん、なにかその本に秘密でもあるの?」

ヒカリさんは興味津々の顔で私の持っている本を見ている。

私はヒカリさんの視線から隠すように、本を後ろ手に持った。

ヒカリさんに本の中を見られないように。

でも・・・

ヒカリさんの話だとシンジさんに本の中を見られてしまったのだろうか?

もし、本当にシンジさんにみられていたらどうしよう・・・

シンジさんの写真を栞代わり使っているのを知られたのかもしれない・・・

ミサトさんから貰った、シンジさんを隠し撮りした写真を。