栞
華王
「あれ委員長、マユミさん居ないの?」
僕は用があってマユミの席まで行くと、そこにはマユミは居なかった。
隣の席の委員長にマユミの事を聞いた。
「あ、山岸さんならさっき教室から出て行くの見たけど。確か次の授業に使う教材取りに
行っただけだから、すぐに帰ってくると思うわよ。なにか伝言あったら伝えておくけど。」
「そう居ないんだ・・・ならいいよ。別にたいした用じゃないから。」
「そう?ならいいけど。」
そう言うと隣の席の委員長は机に向かい直すと次の時間の予習を再開した。
マユミは留守なんだ・・・ちょっと用があったんだけどな。
僕は少しガッカリしてマユミの席を見た。
そこには彼女がさっきまで読んでいた本が置いてあった。
今どんな本読んでいのかな?
勝手に本を見るのは失礼だけど、僕はこっそりと本を開いてパラパラと捲ってみた。
本はティーンズ向けの恋愛小説でマユミが好みそうな本だった。
そして、本の中にある物を発見すると僕は思わず本を閉じてしまった。
委員長がその音に驚いて、僕の事を不思議そうに見たけどなんとか誤魔化した。
そして、僕は本をそっと元に戻すと自分の席に戻った。
さっき感じたガッカリした気持ちをすっかり忘れて、マユミが帰ってきたら本を
見せてくれるように頼んでみようと思った。
その時の顔を想像しながら、僕は一人笑っていた。
委員長の奇異な視線を感じながら。