栗金団
華王


「新年明けましておめでとうございます。」

「明けましておめでとう。
マユミちゃ〜んその振袖似合うわね、綺麗な黒髪とマッチしてとっても似合っているわよ。
やっぱり着物には黒髪が一番似合うわね、私も今度着物着てみようかな?」

「そ、そうですありがとうございます、お世辞でも嬉しいです。
でもたぶん私なかよりもミサトさんの方が似合いと思いますよ、私に比べてミサトさんは美
しいですから。」

「なに言っているの私はお世辞なんか言わないわよ。
でも、そんなに気合入れて着てきたて事はシンちゃんに見せるためでしょう?」

「そ、そんな事・・・・・・・・・・・・はい」

「ほらやっぱり、まったく可愛いいわねお姉さんが抱きしめてあげる。」

「や、やめてくださいミサトさん。」

「そう?遠慮する事ないのに・・・あ、そうそうこれお年玉ね。ほんの気持ち程度で少な
いけどどうぞ。」

「ありがとうございます。
でも頂いていいんでしょうか?」

「いいのいいのほんの気持ち程度しか入ってないから、それに私意外と給料いいんだから。
まあマユミちゃんのお父さんには及ばないけど・・・」

「そうですか・・・では喜んでいただきます。
あのこれはお礼て訳ではないのですが、私の作った栗金団ですけどよろしかったらどうぞ。
お口に合うかわかりませんけど。」

「ありがとうマユミちゃん、私これ好きなのよね〜。とシンちゃんに用があるんだっけ?
ちょっと待っていてね今読んで来るから。
シンちゃん〜愛しのマユミちゃんが来ているわよ〜!」

さっきからマユミとミサトさんの話し声が聞こえていた。
僕はその声を聞きながら僕は部屋を出るタイミングを失っていた。
最初はチャイムが鳴ってマユミが来たと解ったから直ぐに出て行きたかったのだけど、ミ
サトさんが先に出てしまい、なんとなく部屋から出られなかった。
ドアノブを握ったまま、二人の会話を聞いていたのだけど。
マユミの着物姿ていったいどんなのだろう?
早くその姿が見たいな、昨日電話今日は着物姿行きますと言っていたから着物姿で来る事
は分かっていたけど。
さすがにどんな姿なのか一刻も早く見たかった。
でもミサトさんの今の呼びかけで出ていた方がいいのやら、なんか気まずくなってしまっ
た。
僕はその気まずさをなんとかするために、『ミ、ミサトさんからかわないでください。』と、
誤魔化しながら部屋から出ていた。
居間までに行く間に廊下にある鏡で髪が乱れてないかチャックする、チャックしても髪が
短いから殆ど変わらないだけど何となく気分的な感じでチャックする。
居間に着くとマユミに向かい合う位置に座る。
そしてできるだけ平静を装ってマユミの前に来ると挨拶をした。

「明けましておめでとうございますマユミさん。」

「シンジさん新年明けましておめでとうございます。」

マユミはキチンと手を着いて頭を下げて挨拶している。
顔を上げると僕を見てニコッと微笑んでくれた。
そんな様子を見ていて可愛いいと内心思っていた、顔に出ないように注意しながら。
正面から見たマユミの着物姿はとても似合っていた、今日は何時もはストレートにしてい
る髪を結い上げていて普段とは違う印象を与えていた。
ストレートの姿も綺麗だけど、今日みたいに結い上げている姿も新鮮味があってかなり似
合っている。
それに普段は見えないうなじが見えて少しドキドキする。
そしてしばらくの間、マユミを見つめたままボーとしてしまった。
僕のそんな様子をミサトさんがニヤニヤと見ている。
その顔は、僕とマユミのやり取りを見ながらいつ茶々を入れるか考えている顔だ。
マズイ!と思った僕はマユミを促すように立ち上がった。
このままミサトさんの前に居ると

「さあ、マユミさん早く初詣に行こう。」

「あ、はい。でもまだアスカさんに新年の挨拶してないので、できれば挨拶をしてから行
きたいと思うのですが。」

「ア、 アスカまだ寝ているから今度にした方がいいよ。」

「そうですか・・・では、挨拶は今度させて頂きますね。」

「うん、そうだね今度にした方がいいよ。」

僕はアスカに挨拶をしてない事を気にしているマユミを促しながら立ち上がると、玄関へ
と急いだ。
でも急ぐ僕らの後ろからミサトさんのからかいの声が聞こえてくる。
最初は無視しようとしたけど、ついつい振り返って相手をしてしまう。

「もうミサトさんいい加減にしてください。」

「そう?でもシンちゃん〜着付けてできる?」

「え、着付けですか?」

「そう着付け。」

「いえ、できませんけどそれがなにか?」

なにを急に言い出すのだろう?
別に僕は着物なんて着る気無いけど、もしかしてミサトさんが僕の着物でも用意しておい
てくれたのかな?
まさか・・・そんな事無いと思うけど。
じゃあなぜそんな事聞くのかな?

「シンちゃん〜着付けできないと脱がせられないわよ。」

「ミ、ミサトさんなんて事言うんですか!僕がそんなことするわけないじゃないです
か!僕らはただ普通に初詣に行くだけですよ!」

「あの・・・着付けなら・・・自分一人でできますから・・・」

「マ、マユミさんもなんて事言うんですか。」

僕の脇でマユミもさり気なく大胆な事を言う。
僕も男だからそんな関係に早くなりたいな〜て少しは思うけど。
まあ、できるだけ早くに体験したいな・・・
できればどちらかの部屋で・・・
て違う!
ミサトさんのせいでつい想像してしまった。
しかも、ミサトさんを見るとニヤニヤと笑っている。
どうやら頭の中で想像していた事が顔にも出てしまったみたいだ。
自分でも顔がニヤついているのが分かる、隣のマユミを見ると僕に顔を背けている。
耳が赤くなっているから、赤くなった顔を隠すために顔を背けているみたいだ。
僕はマユミの手を掴むと。
「行ってきます!」
と言い残して家から出ていた。
背中に

「シンちゃん〜♪着付けが必要になったら呼んでいいよわ〜♪」

てミサトさんの冷かしを聞きながら。






しばらくすると僕らは目的地の箱根神社に着いた。
目的地まではバスに乗って行ったけど、その間僕とマユミはずうっと話し込んでいた。
最後に会ったのがクリスマスで、昨日も電話で話し込んでいたはずなの。
その神社まので間会話が途切れる事がなかった。
話の内容はくだらない事ばかりだけど、マユミと話しているとそのくだらない話もとても
良い話に聞こえるから不思議だ。
そして気が付くと神社へと着いていた。
僕らは連れ立ってバスから降りたけど、神社に込み具合に驚いた。
普段は静かなこの神社も今日は人込みで込み合っている。
しかも、参道が露天で埋まっていて道が狭くなっていから更に人で込み合っている。
この人込みだともしかしたら、二人が離れてしまうかもしれないな・・・
もしも、離れ離れになったら探しあうの大変だな・・・
僕がそんなことを考えていると、マユミが僕の手を繋いてきた。
最初は少し驚いたけど、僕は少し力をこめて握り返した。
マユミの手は華奢で力をこめるとのは可哀相だけど、二人が離れ離れにならないように。
僕はしっかりと手を握った。
そして僕はその時にある事に気がついた。
二人で手を握り合っていると、顔を合わせて無くても一人じゃないコトに。
たぶん手を繋いで歩くなんて初めてだから、僕はそのことに今気が付いた。
たぶん、マユミもそうなんだと思う。
顔を見ると、いつもみたいに照れて俯いたりしていないから。
そして僕らは参道を進んでいた。





人込みを掻き分けて境内に入ると、お賽箱に銭を入れて御参りをした。
隣ではマユミが一生懸命御参りしている、何をお願いしているかな?
気になるけど、聞くわけにもいかないからな。
僕らは御参りすると、脇にある売店にお御籤を引きに行った。
巫女に初穂料を払って、お御籤を引いた。
くじを引くと15番と書かれた棒が出てきて、その番号を巫女に告げるとお御籤を手渡し
てくれた。
おみくじは『中吉』だった、まあまあかな?
運勢はどうだろう?
恋愛運は・・・背く無かれ、急ぐなかれ。か、誠実で焦らずて事かな?
今のままでいいて事だな・・・
僕は横で巫女にお御籤を貰っているマユミを見た、お御籤を恐る恐るといった感じ開ける
とそっと見ている。
そして、顔を綻ばせた。
どうやら良いくじを当てたみたいだ、もしか大吉かな?
僕は気になってマユミに見せてくれるように頼んだ。

「だめですよ、シンジさん。引いたお御籤を他人に見せるとご利益が無くなるってしまう
んですよ。
だからシンジさんでもこれだけは見せられません。」

そう言ってさっさと木の枝に結び付けてしまった。
一体なんて書いてあったんだろう?
気になったけど、まさか結んであるのを解いて見るわけにいかないから見るのを諦めた。
マユミがお御籤を結んだ枝に僕も結び付けた。
一緒に破魔矢を買うと、また手を繋いで僕らは神社を後にした。
その後、僕らは芦ノ湖に行ってレストランで食事をした後。
海賊船に乗って芦ノ湖一周したり、湖畔で戯れむれたりした。
湖畔で楽しんでいるマユミを見ていてカメラを持ってこなかった事を後悔したけど。
マユミの楽しんでいる姿を見ていて、途中からそんな事はどうでもよくなっていた。
僕らは日が暮れるまで湖畔で一緒に居たのだった。
そして、僕らはバスに乗って市街地をへと戻っていたった。





「ただいま〜」

僕は、そう言いながら家に帰ってきた。

「あらおかえりなさいシンちゃん、帰りが遅かったわね〜
最後にキチンと着付けしてきた?
ああ、マユミちゃんは一人で着付けできるから大丈夫よね。
帯は堅く縛らないと着物が緩んで困るんだけど・・・大丈夫だった?」

「だからそんな事するわけ無いじゃないです!」

「もうシンちゃんたら、照れちゃって。お姉さんに隠す事ないのに。」

「ミサトさん!いい加減にしてくださいよ。」

僕はミサトさんとそんなやり取りをしながら、靴を脱いで居間へと入っていた。
ミサトさんは何時ものようにイスに座りながらビール片手にテレビを見ている。
脇ではペンペンも一緒にテレビを見ている。
僕は上着を脱ぎながら、ミサトさんに向かい合うように座った。

「で、シンちゃん初詣どうだった?」

「ええ、初めて行ったんですけど人が一杯ではぐれそうになちゃいました。
でも、手を繋いでいたから平気でしたけど。
それでも、人込みで離れ離れになりそうで肩を寄り添ってあるかないといけなくて
大変でした。
あ、これお土産の破魔矢です。後で飾っておきますね。」

話しながら、マユミと手を繋いで歩いた事を思い出すとしぜんに笑みがこぼれる。
そして持っていた破魔矢をミサトさんに手渡したが、ミサトさんは気持ちが悪いくらいニ
ヤニヤしている。
一瞬なんでそんなに笑っているだろう?と思ったけど。
すぐに手を繋いで歩いていた事を話したのに気が付いた。
『シマッタ!』と内心思ったけど。
時にすでに遅かった・・・
結局僕はその後夜遅くまでミサトさんにからかわれ続けたのだった・・・






蛇足

マユミがプレゼントした栗金団は僕が帰ってくる前にミサトさんのビールのツマミ
となって消えていたのだった。
僕も食べたかったの〜




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