Handgestrickter Schal

華王


「ハックシュン!」

「もうこれで何回目よバカシンジ!」

私はシンジの方を向くと何時ものように怒鳴った。

「ごめんアスカ、でも自然に出てきちゃってほらまた・・・ハ、ハクション!」

私の隣でシンジがまた大きなクシャミをした、ポケットからポケットチッシュを取り出す
と横を向いて鼻をかむ。
朝から鼻をかんでばかりだから鼻が赤くなっている。
家を出てからもう何回目のクシャミになるのかな?
最初の内は、『あ、三回目だ』て心の中で数えていたけど、10回を過ぎるあたりからもう
いい加減数えるのが嫌になって止めてしまった。
でも今日のシンジは傍から見ていてもかわいそうになるくらいクシャミばかりしている。
家を出る時に一回目、マンションを出る時にはもう三回くらいはクシャミをしていた。
家で一緒に食事をしている時もクシャミをしっ放しだった。
もっとも、それはシンジだけじゃなくてミサトや他の人達も同じみたいだけど。
あの事件から数ヶ月、四季の戻った日本で冬の寒さを初めて感じている人が多いのが原因
みたいだ。
11月まではそれ程寒くはなかったけど、12月にはいると急に寒さが増してきた。
それに高地にある第三新東京市は特に寒さが厳しい、ドイツに居た私もかなり寒いと感じ
るくらいだから冬を知らない人は特に寒いだろう。
ミサトや他のネルフの人たちは四季を知っているはずだけど、もう14年も前の事だから
忘れてしまっている人が多いみたい。
だから冬になったのにまだ薄着の人達が大勢いて、至る所でクシャミを聞く事にできるよ
うになってしまった。
ドイツで冬を何回も体験している私はコートとマフラーを用意して、バッチリ冬支度をし
ているけど・・・
冬を知らないシンジはまだ薄着のままだ、もっとも制服は冬服になっているけど。
それではまだ寒そうにしている。
そう言えば、年がら年中ジャージのトウジはもちろんまだジャージで、バカは風邪を引か
ないを証明している。
この事に関しては私もある意味感心していたりするけど・・・
でも同じバカでも、このバカシンジは・・・どうなのかな?
今朝から見ていてクシャミを連発している姿はかわいそうだ。
なにかしてあげたいけど・・・なにをしたらいいのかな?
防寒具か何かをプレゼントするのが一番なのだけど、急にプレゼントするなんてなんか恥
ずかしいな。
いつもシンジに少し意地悪に接している私が急にプレゼントをあげたら、不信がるだろう
し・・・
なにかイベントか何かが在ったらそれにかこつけてプレゼントできるのに・・・
鼻をかんでいるシンジを見ないようにフッと視線を逸らすとケーキ屋さんのクリスマスの
ディスプレーとクリスマスケーキ予約承りますと書いたポスターが目に付いた。
そうか・・・もうクリスマスか。
クリスマスにはケーキとプレゼントが付き物よね、これならプレゼントをあげても変じゃ
ないよね。
私はシンジの方を盗み見たシンジは鼻を労るように触っている、そうすれば少しは鼻の調
子がよくなるかのように。
やっぱりシンジになにか防寒具になる物をプレゼントしよう。
シンジの様子を見ながら私はそう決めたのだった。





授業中私は上の空で授業を聞きながらシンジへのプレゼントを考えていた。
防寒具といえば、コートが一番ポピュラーなのだけどもしかしたらシンジもあまりの寒さ
のために自分で買う可能性があるし。
帽子は買ってもあまり使われなさそうだし・・・それならマフラーが一番かな?
手袋をプレゼントするものいいけど、あまり使ってくれそうにないし。
やっぱり一番ありがたみがあるのはマフラーかな?
市販の物をプレゼントしてもいいけど・・・でもそれだとありがたみが無いな。
せっかくプレゼントしてあげるのだから少しは手を加えた物のいいのだけど私には編物が
できないし・・・
誰かに編物教えてもらうにしてもだれがいいか・・・
ミサトは・・・あの性格からしてまず論外として、リツコ・マナは教えてくれそうだけど
後が怖いし・・・ヒカリは意外と細かいの苦手だからな・・・ん〜誰に教えてもらおう。

「え〜それでは山岸さん続きを読んでください。」

「はい。」

私が考え事している間に授業は教科書の朗読に入っていた。
そういえば今は英語の授業で、学校の授業の中で一番私に縁のない授業だ。
教師も私のことは知っているから、授業中何をしていても見てみぬ振りをしている。
もっとも他の生徒が寝ていたりしても気にしないみたいだから、私だけが特別てわけじゃ
ないのかもしれないけど。
そういえば、今教科書を読んでいるマユミはなかなか発音がいいみたいだ。
私が聞いてもアクセントとかがキチンとしていて心地よい響きで朗読している。
もしかしたら海外に住んでいた時期があるのかもしれない。
彼女のお父さんは国連の職員だから海外にも転勤が多いみたいだから。
そのマユミの朗読する声につられてマユミを見た私はいい相手が居たと思いついた。
マユミなら編物上手そうだ。
それに彼女が私の知り合いの中で一番親切丁寧に教えてくれそうだ。
よし彼女に教えて貰おう。
私はそう決めると休み時間マユミに教えてくれるように頼みに行った。
マユミは自分での席に座っていて端末を弄りながら次の授業の復習をしている。
私はそれを見て邪魔して悪いな〜と少し罪悪感を覚えながら声をかえた。

「ねえマユミちょっといいかな?」

「なんですかアスカさん。」

マユミは端末の電源を切ると私の方を振り返った、その時に隣の人が留守なのを確認して
私にイスを勧めてくれた。
私はイスに座りながら話かけた。

「マユミて、確か編物できたよね?」

「ええ得意て程ではないですけど、大体の編物はできますけど。アスカさんも編物してい
るのですか?」

マユミのそのにこやかに笑いながらの質問に、編物すらできない事に羞恥心を覚えながら
私は答えた。

「その・・・私は編物できなくて・・・できれば私に編物の仕方教えて欲しいんだけどい
いかな?」

「ええかまいませんよ、私でよければいくらでもお教えしますけど。でもアスカさんどう
して急に編物を習いたくなったのですか?誰かへのプレゼントですか?」

マユミの意外と鋭いすぐ答える事ができなかった。
私はチラッと後ろを見た、そこにはシンジが隣の席の生徒と笑いながら話をしている。
でも私の視線に気が付いたのか、私の方を見ると手を振ってきた。
今まで話していた生徒がそんなシンジの様子を見て少し怪訝そうな顔をしている。
私は慌てて顔を背けながらマユミの方に直した、そして少し顔が赤くなっている顔を隠す
ために俯いた。
そして俯いた視線にマユミの机にぶら下がっている紙袋が目に付いた。
その中には編み掛けの編物が入っている、殆ど髪袋に入っていて何を編んでいるのか解ら
ないけどその大きさからして男性物みたいだ。
これはチャ〜ンス!
私はさっきの質問を誤魔化すためにこの編物の事を聞く事にした。

「ねえマユミこの編み掛けの編物て誰かへのプレゼント?」

「え・・・」

マユミは私の質問を聞くと耳まで赤くして俯いてしまった。
そして呟くように答えてくれた。

「あの貰ってくれるかわからないですけど・・・プレゼントしようと思って編んでいるで
すけど・・・」

マユミに好きな人居たんだ、知らなかったけど誰だろう?
私の知っている人かな?
今ココで聞きたいけど、ここで聞くのは可哀相だから編物教えてもらう時に聞こう。
マユミが好きになった人が誰なのか私も興味あるから。
私が続けて話しかけようとすると呼び鈴が鳴った、私は手短に放課後一緒に毛糸と編み棒
を買いに行って、マユミの家で編み方を教えてくれるを約束すると自分の席に戻ったのだ
った。





「おじゃまします」

私はそう言いながらマユミの家にお邪魔した。
私達がマユミの家に着いた時にはもう遅い時間になっていた。
編物道具をだけを買う予定だったけど、買い物に行くとつい目移りしてしまい、余計な物
も色々買ったりしていたから時間が遅くなってしまった。
私達は早速マユミの部屋に行くと買ってきた編物道具をつかって編み方を習い始めた。
初心者の私は簡単なのでいいと思っていたけど、マユミが最初は少し時間がかかるけど二
色の毛糸を使った縞模様のマフラーを編みましょうと言ったので縞模様のマフラーを編む
事になった。
まず左手に毛糸を絡めてから左手に棒針を持って作り目を作り始めた。
その後は数を間違えないように数えながら編んでいき、表目、裏目と順々に編んでいった。
途中わからない所はマユミに聞きながら編んでいって、次の糸に変えるために二つの糸の
根元を玉結びで結んでまた表目、裏目と編み進めていった。
私は編んでいって意外と編物て簡単なんだな〜と思ったけど、マユミが言うにはこれはマ
フラーが簡単な方だからだ。
数を間違えずに順々にあんでいけば失敗しないで完成する事ができる、数を間違えたらそ
の個所を解いて再び編みなおさないといけないけど。
慣れると意外といい暇つぶしになるかもしれないな。
私は編みつづけながらそんな事を考えていた。

「アスカさん、紅茶どうぞ。」

私がその声につられて顔を上げると私の脇にマユミが紅茶を持って立っていた。
マユミは紅茶を私に手渡すと私の前に座った。

「アスカさん一所懸命編んでいましたね、その一生懸命編まれたマフラーを貰える人て幸
せですね。良かったらいいんですけどその人教えて貰えますか?」

マユミはにこやかに笑いながらそう聞いてきた、でもなんかマユミにシンジに渡すて言う
のは同じクラスメイトだし少し恥ずかしかったから言わない事にした。

「そ、それは秘密よ。マユミこそ編んでたセーター誰にプレゼントする気なの?」

「わ、私も秘密です。」

マユミはそう言うとまた耳まで赤くして俯いてしまった。

「でも、お互い相手に気に入ってもらえるといいですね。」

マユミは顔を上げならそう言った、まだ赤面したままだけどそれは私も同感だった。

「そうね、お互い気にいってもらえるといいね。」

「はい。」

私達はお互いそう言いながら笑いあった。
私は紅茶を飲み終わると、もう9時近くになっていたので編物を中断して家に帰る事にした。
編み方を教えてくれたお礼を言って、最後にかぎ針を使った網目の伏せ方を習って家に帰
った。
そして24日に向けて暇な時間を見つけてはシンジにばれないようにマフラーを編み進め
て行った。





そして12月24日。
私はシンジが帰宅するのを待ってプレゼントする事をにした。
シンジが帰宅すると直ぐに渡したかったけど、居間でテレビを見ながら素っ気無いふりを
しながら手渡すチャンスをうかがった。
そして帰宅したシンジが一旦部屋に行って、居間に来ると新聞を読み始めたの見て今が
チャ〜スと何気無くマフラーを手渡した。

「ねえシンジ、最近私編物に興味もったんだけど。これ練習で編んでみたんだけどいる?
練習で作ったからあまり良い作りじゃないけど、私の手作りなんだからね。」

「ありがとうアスカ、ちょうどマフラー欲しかったんだ。早速着けてみるね。」

シンジはそう言うと直ぐに自分の首にマフラーを巻き付けた、私は直ぐに身に付けるなん
て思ってなかったから少しドキドキしたけど、シンジが私が編んだマフラーを巻くのを見
守った。
シンジはマフラーを巻くと「どう?似合う?」て行って私の前で一回転した。

「まあまあね、モデルが悪いけど私の出来野いいマフラーのおかげで少しはマシに見える
わね。まあこれから練習で色々編物しようと思っているから完成したらあげるから、大事
にしなさいよ。」

と口ではそう返事したけど、シンジが私の編んだマフラーを着けているのを見て苦労して
編んでよかった〜と思っていた。
こうして見ると初めて編んだから編目が少しゆがんでいるけど、それ程目立たないしまあ
手編みですよて、解るぐらいになっているから意外と良い感じなっている。
それにシンジに似合っているのが一番かな。
私は心の中でガッツポーズをした。

「まあプレゼントしたんだから、今度なにかお返ししなさいよ!」

私はそう言うとシンジが「うん解ったよ、今度アスカが欲しいのなんでもプレゼントする
から欲しいの言ってね。」といいながらまだマフラーを見ていた。
その様子を見ていると予想以上にマフラーを気に入っているみたいだ。
時間をかけてマフラーを編んだかいがあったな、今度は帽子か手袋でも編んであげよう
かなて思っていた。
でも、そのシンジの様子を見ていてなにか引っ掛かる物があった。
シンジの着ているセーターに何か見覚えが・・・
そしてシンジは聞き捨てならない事を言った。

「でもよかった、今日マユミさんに学校でセーター貰っちゃってね。このマフラーとお揃
いの色なんだけど良かったセットになっていて。」

ん!!!!!!!!!!
確かに、そのセーターはマユミが編んでいた物だった。
マユミめ!!!!
まさかシンジにプレゼントするなんて!!!!!!!!
私は心の中で絶叫していた。






その後図書館で第一次会戦あったとか無かったとか・・・・
それは又別のお話。


注)
Handgestrickter Schalとはドイツ語で「手編みのマフラー」て意味です。