「ただいま!」

買い物に行っていた、私はそう言いながら家に帰ってきた。

家に入って玄関で靴を脱いでいると、ポストの中に一通のエアーメールが入っているのに気がついた。

あれなんだろう?

疑問に思った私はエアーメールを手に取って宛先を見る。

それはドイツの継母からのクリスマスカードだった。

裏に『Frohe Weihnachten Asuka!』(メリークリスマスアスカ)と書かれている。

そっか、今日はクリスマスイブなんだよね。

片手でクリスマスカードを口元に当てながら、今更ながらそんなことを思い出していた。



Frohe Weihnachten!(メリークリス)
華王


「ねえシンジ、ミサトてまだ帰ってきてないの?」

私は扉を開け洋間に入ると、ソファーに座ってペンペンと一緒にテレビを見ているシンジに向かってそう

話しかけた。

「え?」

シンジはテレビから目を話すと顔だけ私の方を振り向いた。

一緒にテレビを見ていたペンペンはそのままテレビを見続けるている。

「なにアスカ?ごめんテレビを見てたから気がつかなかったよ。何か用?」

テレビを見るとシンジが毎週欠かさず見ているお笑い番組を放送してる、これなら私の言葉を聞いていな

いのも納得できる。

ホントなら怒鳴るとこだけど、しかたなくもう一度繰り返すことにした。

「ミサトはまだ帰ってこないの?」

「うん、まだだよ。」

「ふ〜んミサトも大変ね。昨日に続いてこんなイブの夜まで残業なんて。」

「ああミサトさんの事?それなら朝に加持さんと会う約束があるからて電話があったよ。

今日は二人でホテルで食事してくるんだって、晩御飯は勝手に食べてだって。」

「え!バカシンジ!なんでそんな大事なこと私に黙ってたのよ!

ミサトが加持さんと食事なんて私聞いてないからね。」

「それならミサトさんが僕にアスカには黙ってて言ったんだよ、アスカに知られると五月蝿いからて。」

「たくミサトめ!クリスマスイブなのに静かにしてたと思ったらこれだ。ホント信じらんない!

それに加持さんも加持さんよ、部屋にも居ないし携帯も留守電だったと思ったらこれだったのね。

あ〜あ、イブは加持さんと一緒に過ごそうと思ったのに!!」

私は見事にミサトに出し抜かれた事を知り、悔しがった。

それに協力した加持さんも加持さんだ、まだ私の事を子供扱いしかしてくれない。

今日は加持さんと一緒に居られると楽しみにしてたのに・・・・

シンジは私に話し終わった後、腕時計で時間を確認すると手にしていたリモコンでテレビを消して立ちあ

がった。

ペンペンが見ていたテレビを消されて抗議の声を上げたので、シンジは『ごめんごめん』と言いながら慌

ててテレビのつけるとそのまま洋間から出て行こうとした。

「あれシンジ?これから出かけるの?」

「うん、ちょっとね。」

シンジは少し照れそうにしながらそう答えると、足早に居間から出よとしている。

なんか怪しい・・・

「ん?」

なんかシンジの様子に不信に思った私は改めてシンジの格好を見ていると、シンジはいつも普段着では無

くかなり気合の入った服装をしている。

そういえば、二日前にネルフでの訓練の後に青葉とマヤに何かを聞いてけど。

たしか、お店の場所を聞いていたみたいだ。

その時の帰りに何かを買いに行ったみたいだけど、その時買った服なのかもしれない。

「シンジ、これから出かけるの?」

「う、うん・・・」

私の質問にシンジは明らかに動揺している。

シンジが隠し事の出来ない性格なのは知っていたけどこれほどとは・・・

「あ、いや、これからトウジとケンスケの三人でお祝いするんだよ。ほら忘年会も兼ねてね・・・」

「ふ〜ん、暇だから私も一緒に行こうかな。」

「え!それはちょっと・・・ほら男同士だからアスカもつまらないと思うし。」

動揺しながら嘘とばれる言葉を続けているシンジを観ていると、ため息をつきたくなる。

右手はにぎにぎとして『僕動揺してるの!』と自己主張をしているし。

でも暇だから私はシンジ虐めを続ける。

「別に気にしなくていいわよ、あんたら三人が普段どんな所で遊んでいるか気になるし。」

「え・・・いや・・・・」

「ほら、それに男三人じゃなんか寂しいでしょう。私みたいに可愛い子がいれば気分も盛り上がると思わ

ない?」

「そ、それはそうだけど・・・」

私の言葉にシンジは暫くの間考え込んだ後、なにか吹っ切れたのか少し力強く話しだした。

「本当は三人で遊ぶんじゃないんだ。」

「ふ〜ん、でどこにいくの?」

「マユミさんの家に呼ばれてるんだ。」

「え、マユミ呼ばれてるの?」

「うん。」

私は意外な気がした、まさかマユミに呼ばれてるなんて。

マユミがイブにシンジを家に呼ぶなんて意外な気がする、まあシンジがイブにマユミを誘うなんて無理だ

と思うけど。

「ねえシンジ?本当にマユミなの?」

私は思わず聞き返すにいられない。

「うん、マユミさんだよ。」

シンジは本当の事を話して決心したのか、誘われた時の事を話しだした。

「二学期の終業式の日にね、マユミさんと二人で一緒帰ったんだけどその時に誘われたんだ。

家までの帰り道色々と話しながら歩いてたんだけど、たまたま話題がクリスマスの事になったんだけど。

マユミさんのお父さんが出張でクリスマスから年末まで留守にするんだって、だから

『暇ならイブの日に遊びに来ませんか?』て言われたんだ。

僕も特に予定が入って無いからOKしたんだ。」

シンジはニッコリしながらそう話した。

確かにシンジの話しにウソは無いと思う、それにしても内気なマユミが誘うなんて。

しかもイブの日に。

シンジはたまたまそんな話しになったて言うけど、マユミはドキドキしながら誘ったと思う。

顔を真っ赤にして。

マユミの事を考えたら大声で祝ってあげたいほとだ。

たぶん今ごろは料理を作って、ドキドキしながらシンジが来るのを待っていると思う。

でも、でも・・・なんか嫌だ。

シンジがマユミと一緒にイブを過ごすなんて。

「そうだ、アスカも一緒に行く?マユミさんも人数が増えた方が楽しいと思うし。

ねえどう?」

でもシンジは、私やマユミの気持ちなんか考えもしないでそんな事を言ってきた。

私が一緒に行けるわけないのに。

マユミが勇気を出してシンジを誘ったのに。

でも、もしも私が一緒に行ったらどうだろう?

だぶん、喜んで迎えてくれるだろう。

マユミはそんな子だから、悲しそうな顔を隠して・・・

だから・・・一緒に行けない。

「バカね、マユミはシンジだけを誘ったんでしょう。だから私が一緒に行ったら駄目なの。」

「そう?」

「そうよ。」

「わかったよ、じゃあ時間に遅れるからもう行くね。」

そお言い残すとシンジは玄関に向かって歩きだした。

そして、シンジの手には綺麗にラッピングされた細長いプレゼントが握られていた。

たぶんそれはマヤにでも教えてもらったお店で買った、マユミへのプレゼントなんだろう。

形からしてネックレスかな?

たぶん、マユミは喜んで受け取るんだろうな・・・

そんなシンジの後姿を見てなんか引き止めたくたくなる、なぜだろう?

祝ってあげるべきなのに・・・

私は加持さんみたいな大人が好きで、シンジみたいな子供なんか気にしてないはずなのに・・・

やがてシンジは「行ってきます。」と言い残すと出かけていった。

「バカシンジ」

そして私はそんな言葉をつぶやいていた。


マユミとシンジ












次の日私は目覚ましの音で目が醒めた。

まだ眠いけど、もう起きなくちゃ。

まぶたを擦りながら、無理に体を起す。

まぶたを擦っていてなんか異変に気がつく、私・・・寝ながら泣いてたみたいだ。

なんか嫌な目覚めだな、そんな事を思いながら起き上がると部屋を出た。

廊下に出た私は壁に寄りかかって置いてある紙袋と手紙に気がついた。

なんだろう?

私は手紙を開封すると中身を読んだ。




クリスマスおめでとうアスカ

昨日はごめんね。

アスカが寝ているのでプレゼントを置いておきます。

マヤさんに聞いたお店で買った物だけど気に入るかどうか心配です。

今日はミサトさんと三人でお祝いしようね。

シンジ




え?

私は急いで紙袋の方を開ると、そこにはリボンで巻かれた小さい箱が入っていた。

リボンを解いて箱を開けると、イヤリングが入っていた。

なぜだろう。

一目で安物てわかる品だけどなんか今まで貰ったプレゼントの中で一番うれしい。

「バカシンジ」

箱を抱きながら、なぜか私はまたそうつぶやいていた。


アスカとシンジ



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